研究アーカイブ
- 東北太平洋沖地震
図1は我々VLF/LFネットワークの概要です。VLF/LF受信点は北から母子里(北海道)(MSR)、調布(CHF)、春日井(KSG)、高知(KCH)である。各観測点では日本の2送信局(JJY局とJJI局)及び外国の3局(NWC局(オーストラリア)、NPM局(ハワイ)、NLK局(米国シアトル))からの電波を受信している。
そこで、3.11大地震の前兆現象が我々のVLF/LFネットワークによって受信されていたか否かを解析する。
(1) NLK局(米国シアトル)と日本の観測点(調布(CHF)、春日井(KSG)、高知(KCH))パスにおいて明瞭な前兆検出
図1のNLK-CHF (米国シアトル)パスは3.11地震の震央の上を通過しており、有意な伝搬異常が予想される。図1ではNLK-CHF を結ぶ大円とこのパスの感知領域が点線の楕円にて描いている。
図1 調布観測点のパス
図2(a)はNLK-CHFパスの観測結果である。夜間の平均振幅(トレンドと描いてある)の日変化である。この夜間の平均振幅はその日30日間の値の標準偏差(σ)によって規格化されている。図2(a)より3月5日、6日にて明瞭な前兆が検出されている。更に、3月5日の振幅減少は-3σよりも大きいことがわかる。
図2(b)、(c)はKCH及びKSGでの対応する図である。KCHでは-2σに接近する異常がある。KSGではそれほどではないが、その前兆は明らかに存在する。
図2(a) NLK-CHFパスの観測結果
図2(b) NLK-KCHパスの観測結果
図2(c) NLK- KSGパスの観測結果
(2) JJY局(福島)-MSR(母子里)パスでは前兆は見られず
図1では主に海岸線より50Km以内内陸部を観測するJJY-MSRパスにて、図は示さないが全く前兆的伝搬異常(即ち、電離層擾乱)は検出されず、この事は伝搬異常の原因は主として海上であると言える。
(3) 学術論文として近々発行される。
その速報論文はイタリアの国際誌Annals of Geophysics、特集号に掲載が決定している。